☆☆不定期エッセイ☆☆ 《無窮の風》

             

                             

 うだる暑さと、押し寄せてくるバイクと車。
 右を向いても左を見ても、バイクと車と人の大洪水。
 音や臭いや喧騒を撒き散らしながら我が物顔で静寂と風情を跳ね飛ばしてゆく。
 二人の旅人は、それらにもみくちゃにされながらハノイの街を朝から逍遥していた。
 疲れたなア・・・。少し休もうか・・・。
 うん・・・。
 あ! あのカフェは!
 よさそうだな・・・行こう!」
 狭くて暗い階段を登ると、椅子とテーブルが無造作に置かれた空間が現れた。路上から見かけた外のカウンター席へまっすぐ向かう。
 ふ〜。
 椅子に腰を下ろす。
 随分歩き回っていたので、足を伸ばして座った感覚が心地よい。
 眼下の景色が心を休ませてくれる。
 「ベトナムコーヒーはどろっとしていて美味いぞ」
 熱帯の風が過ぎる。
 僕は、ビールをあおる。
 え? コーヒーじゃないの? てなことは考えない。
 ふ〜。
 しばし外の風景を眺める。
 ビールが美味い。
 ようやくゆったりした時間が流れる。
 息子の飲む、ベトナムコーヒーの香りが漂う。
 二人とも、だまって風景を眺める。


《3月中旬から半月ほど大学生の息子とラオス・タイ・カンボジア・ベトナムとバックパッカーの旅をしてきた。その2話です》

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